※「地球儀」は必要?いらない?(2)のつづきです。
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地球儀の、もう一つの顔
地球儀は、触って見ているだけで、「地球は丸い」「軸がある」「一定方向に回る」「軸が傾いている」ということが、幼稚園児でも「わかる」ようにしています。
ですが、学校では、社会科の「地理」の範囲で地球儀の授業をやったり、「社会科の副教材」になったりするので、つい地図と比較してしまいがちですが、地球儀の中には、月の模型である「月球儀」や、星座が書かれた「天球儀」がついているものもありますので、「理科の教材」という側面もあることは、意外と忘れられがちです。
月球儀つきのタイプ。
暗くすると地球儀が「天球儀」に変わる機能も。
そもそも、地球儀は「地球の模型」である
我々の住む地球は、一番身近なハズなものなのに、実際に「地球」としてこの目で見ることは、宇宙飛行士でもない限り不可能なものです。ですから、ほとんどの人は、衛星写真や、それを元にした映像で地球を見ます。
ですからそれを、航空写真がない時代から、「地球儀」という模型にすることで、身近で触れるものにすることで、「地球」というものを、直感的&客観的に理解できるようにするのが地球儀なのです。
この「直感的」というのはとても大事な要素で、実際、中学理科では、「地軸」の傾きによる季節の変化を学びますが、地球儀の傾きは、どの商品でも実際の傾き(23.4°)に合わせた造りになっているため、地軸が傾いていることは、一瞬で理解できます。
そこから考えても、理科という視点で見ると、地球儀ほど地球そのものをわかりやすく説明している教材はありません。
小学校でやらない「理科としての地球儀」
ですが、小学校の理科では、地球儀から学ぶことはそう多くはありません。
なにせ、小学生でやるのは「太陽の動き方」とか「月の満ち欠け」とかそんなレベルで、我々が当たり前のように知っている、「地軸の傾き」「自転」「公転」は、小学校ではなく、中学(しかも3年)の理科で習います。
なんなら、小学校では先に「地球の内部」をやるので、地球儀があったら、パカッと割りたいくらいです。
実際、地球の内部を見られる機能を付けた地球儀(下)もありますが、2万円くらいする上、回転軸がなく、家庭で使う地球儀としてはあまり使いやすい物ではありませんので、ペーパークラフトなどで再現するやり方の方が一般的でしょう。
渡辺教具製作所の『地球内部構造地球儀』(出展:Amazon)
ですから、普通の小学生が教科書で習うレベルでは、「地球儀が理科に役立つ」というイメージがまったくできません。
その辺で、小学校の「入学祝」で買ってもらった地球儀が、うまく理科で有効活用されない現実があります。
また、先ほどあげた「地軸の傾き」も、中学生くらいになれば、地球儀を使わなくてもすぐ覚えられてしまうと言った問題(?)もあります。
地球儀不要論の最大の原因は「社会科」にあり
では、社会科ではどうかというと、地球儀は、小5の地理のはじめ、世界地図をやる前に登場します。
実は、2009年から始まった『新学習指導要領』により、今の子どもたちは、地球儀を親世代より授業で使うようになっています。
親世代では、地球儀なんて授業で使う事すらなかったのに、です。
それもあってか、今の親世代の人たちが「地球儀っていらなくない?」と考えてしまうのもあります。
社会科的な地球儀のメリットとは?
なぜ、地球儀を社会科で習うのかを理解するために、ここで一つ問題を出します。
「日本から見て、アメリカはどの方角にあるか?」
という問いがあるとして、皆さんはどう回答しますか?
「東でしょ?」って言いますよね。
でも、そう回答した方は、不正解です。
なぜなら、地球儀で測ってみると、「アメリカは北東」にあるからです。
これは、NHKの動画アーカイブにわかりやすくまとめてありますが、「アメリカは東」というのは、あくまでも一般的に普及している「メルカトル図法」で見たアメリカ合衆国であり、地球儀で見ると実は「東にあるのは南米アルゼンチン等」が正解です。
今の親世代は、グリーンランドの例を引き合いにして、「地球儀は『面積』が正確」ということぐらいしか習った記憶がないかと思いますが、今は、ある都市とある都市の間の『距離』や、先ほどの例のように、ある都市からある都市への『方位』が正確である、といったことを授業でとりあげるように言われています。
ちなみに世の中便利なもので、そういった地図の欠点を補う、「正しい『方位』と『距離』が測れるスケール」つきの地球儀、『先生おすすめ小学生の地球儀』という商品もあります。
出展:Amacon.co.jp
しかし、現実問題、学校の授業で、「地球儀」を「地図帳」のように使うことは不可能です。一人一人に配るには数も必要になるため、コストがかかり過ぎます。かといって、「家から持ってきて」というサイズでもありません。
また、「テスト」という視点から見ると、目の前に地球儀がないと解けないような問題はテストに出せません。
結果、「地球儀は地図と違って『距離』『面積』『方位』が正確に理解できるのだ」という長所があったとしても、それを体感ではなく、「知識」として問う問題にしかならないのです。微妙です。
これは、地球儀が必要な理由としては、正直弱いです。
しかしそれでも、「地球儀が必要だ」とする理由は本当にあるのでしょうか? またあれば、どう利用するのがよいのでしょうか?