※「地球儀」は必要?いらない?(4)のつづきです。
Contents
「地球儀は使えるツール」って言えますか?
これまで見てきたように、地球儀は「社会科」や「理科」にも使え、地球の特性から来るものを手っ取り早く理解するのを助けてくれる学習ツールです。ひとことで言うと「使えるヤツ」なんです。
しかし、日本の学校教育では、「社会=文系」「理科=理系」とハッキリ分かれており、教える内容も、たとえば世界の気候は中1社会、地軸や公転などは中3理科で習うなど、教科ごとの関連性がほとんどないまま授業がなされます。
「世界の気候」なんて、地球儀を使った「地軸の傾き」「地球の公転」の説明があれば理解が深まりやすいにもかかわらず、です。
赤道周辺がなぜ暑いかの説明がおざなりなのに、「赤道付近=暑い=亜熱帯」・・・というのでは、ほとんどの子に論理的思考力がつくはずがありません。「なぜ赤道付近は暑いのか」という論理が飛躍しています。
たしかに、高校くらいにならないと、複雑に絡み合った事象を理解するのは難しいというのもあるのですが、高校に行けば、文系と理系が分けられたり、地理と歴史は選択制になり、地理をやらないという選択も出てきます(新しい『学習指導要領』では地理総合として必須になりますが)。
そんな状態で、いざ「地理やるぞ!」というときに「地球儀」を使いだしても、遅いと思うんですよね。ほとんどの学生は興味ないし。それこそ「好きな人」しかやらない・・・。
みんながみんな、こんなに地球儀を楽しそうに使ってくれるとよいのですが
日本では教科を横断する授業は、一応『総合的な学習の時間』がありますが、現場まかせのため、準備が大変で活用されず、道徳の授業やイベントの準備になっているのが現実です(新しい『学習指導要領』では、『総合的な学習』を減らして道徳必修にしています)。
そんな環境なので、教科を横断できる教材であるはずの「地球儀」が、大きな役割を持っている学習ツールだという考えに至ることは少ないでしょう。
つまり、「地球儀なんかいらない」という受難の一番大きな理由は、学校が、「地球儀はこんなに使えるんだよ!」と伝えきれていないということでしょう。
学校は地球儀の「使い方」を教えていない
地球儀は、地球の模型です。
とにかく、目の前にないと意味がない教材です。
第2回で信長のエピソードを紹介しましたが、地球儀は地球の模型を使って、地球規模(グローバル)での理解を深める道具です。
その存在意義をすっ飛ばして、「地球儀のこの線はなんと言うでしょう?」という問題を出したところで、何の意味があるのでしょう? はなはだ疑問です。地図でいいですよね?
ここは、基準に沿った一斉授業をしなきゃならない学校教育の悲しさで、「教えなきゃいけないこと」が先に来てしまい、地球儀が身近でない子どもの理解がついていかない現状が生まれます。教える内容も、「距離」「方角」「面積」が正しいくらいです。
『学習指導要領』にも、「活用するように」と書かれるようになりましたが、どうやって活用するかは現場任せです。
その結果、子どもに「Googleマップがあるし、地球儀を勉強してもムダ」と思われて、地球儀不要論ならまだしも、ますます勉強がキライになっていくのです。実に悲しいことです。
上手く使えば、地球儀は子どもを賢くしてくれるのに・・・学校では「地球儀の使い方」ではなく、「地球儀そのもの」を教えてるのが現状です。
では誰が、地球儀の使い方を教えてくれるのでしょうか??
地球儀の正しい使い方
これまで見てきたように、地球儀はさまざまなことを学ぶのに使える学習ツールです。
学校の勉強を度外視しても、日本と世界は同じ地球という惑星の住人という「共同体感覚」だったり、世界とはカンタンにつながれるという「グローバル感覚」を身につけることもできるでしょう。
また、地球そのものへの意識を持つことで、「環境問題」や「ロケット開発」などに興味を持つかもしれません。子ども特有の、自分の周りのことしか考えられない状態から、視野が圧倒的に広くなるのも、地球儀の魅力です。
しかし、子どもがそうなるかどうかは、親次第です。
地球儀は、立体模型ですので、できるだけリアルタイムに使うのが正しい使い方です。
学習机があるのなら、社会や理科の勉強の際に、手元ですぐ確認できる位置にある方がよいでしょう。
そうすれば、教科書などの紙に書かれているものだけでなく、縮尺や方位が正確な地球儀を使って確認することで、より正確に事象を確認することができます。
なにせ、学校で勉強するものは基本的に答えのあるもの、つまり「事実に基づくもの」ですから、文字情報として頭に入れるよりも、事実であることを「確認」できれば記憶に定着しやすくなるのは当然だからです。
もっと進めば、子どもが、大人が気づいていないようなことを発見するヒントを与えてくれるかもしれません。
だからといって、そういったものを強要してはいけません。
結論:地球儀は「使った」方がいい
大切なのは、そういった「学びに使う習慣」を、小さい内からすることです。
忙しい方も多いと思いますが、子どもとテレビを観る時間があるのであれば、地球儀を、テレビの横に置いていておき、テレビで少しでも「世界」「地球」というものが絡んだものをとりあつかっていれば、ここぞとばかりに地球儀を取りだして調べるのがオススメです。
「イモト、こんな遠い国に行ってるんだね~」
「今日のYOUはこの国から来たんだって~、どういうルートで来たのかな?」
「このデカい魚がいるのはこの海らしいよ」
などと、親子で地球儀を回しながら興味を持って会話をすることが大切です。さらに百科事典やスマホで詳しく調べると言うのもアリでしょう。
今は、ビーチボールタイプの地球儀もありますので、そういったもので遊び感覚で触りながら見てもいいと思います。
別に、親が知らないことがあって、何も教えられなくてもいいんです。
むしろ大切なことは、親が(ポーズであっても)「知らないものをわかる努力」をすることが大切です。
難しい表現をすると、古代ギリシアの哲学者、ソクラテスが唱えたとされる『無知の知』というものです。
子どもは、親の背中を見て育ちます。
親のその「習慣」を見て、子どもは地球儀の使い方を学びます。それがあれば、子どもが自ら学びを深めます。
それを、学校に期待する方のは、大きな間違いです。
学校は、「地理」でしか地球儀を使わないように、あくまでも「一つの見方」しか教えません。
ですが現実は、一つの見方だけでじゃダメでしょう?
なぜなら、「これって、何だろう?」と思う気持ち、「知らないものをわかる努力」こそが、勉強する強いモチベーションの根源であり、多種多様な価値観でつながる必要があるグローバル社会で求められる「賢明さ」でもあるからです。
大切なのは、英会話ではありません。「理解しようとする」気持ちです(現実の大人たちは、理解しようとせずに叩き潰そうとしておりますが・・・)。
そういった習慣を教えるために手っ取り早いのが、地球という説明しにくいものを、コンパクトに、わかりやすくまとめた「地球儀」という道具なのです。
だって、多くの地球儀が同じように傾いていることに、「これって、なぜだろう?」と思うでしょ?
地球儀には不思議がいっぱいなのです。
だって、地球が不思議がいっぱいなのですから・・・。
親としてそれを伝えていくのは大事なことですし、「環境問題」「国際問題」「食糧問題」「紛争問題」「人種問題」など、これからの子どもたちが直面する様々な課題と向き合う準備をさせていくためにも、
私は、
とりあえずどんなものでも、
「地球儀はあった方がいい」と言いますし、
「地球儀は使った方がいい」と言うのです。
地球儀の選び方についてはまた後日ご紹介します。